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    2009

01.06

京・今日で打ち止め

今日までは 紆余曲折に 放置 転倒




い・一本鞭    一本鞭、憧れつのる夢の打ち音
ろ・蝋燭     蝋涙に、咲く緋牡丹は 恋の徒花
は・ハイヒール  ハイヒール 踏まれる痛みが ご褒美に
に・肉球虐め   肉球の 触れる感触 喘ぐひと
ほ・放置責め   放置され 怯える物音 感じる視線
へ・ペニスバンド ペニスバンド 締める身体が心を縛る
と・○隷     囚われて 競られ売られて あなたのもとへ
ち・乳首責め   乳首にこそ 繋がれ結ぶ 縁の痛み
         ちぎれると 泣いてもがいた 涙の愛しさ
り・陵辱     陵辱の 文字に惑った 幼き日
ぬ・脱ぐ     脱がされる 脱ぐ 脱ぎ捨てる 捉われる常識
る・ルーティン  ルーティンを 決める責め手の 意外な脇道
を・をことてん  をことてん 頼りに進む 迷う足取り
わ・若妻 若妻の 滲む涙に 恥辱の責め縄
か・枷 枷の中  逃れられずにもがく 愛しさ
よ・幼児プレイ  夜這い 夜這い待つ 求める胸は 焼ける恋路よ
た・立ちバック  立ちバック 素肌に触れる 冷たいステン
れ・レズビアン  レスボスの 旧き昔も 愛しき想いよ
そ・双頭ディルドウ  つながれて 分け合う喜び その痛みゆえに
つ・吊り     吊揺られ もがき踊らん 主の手の中
ね・ネット調 教  ネットでさえ 主の文字だけ 胸に染み入る 
な・泣き顔    泣きむせぶ その耐え難き 痛む愛
ら・ラップ巻き  ラップ捲く 身動きならぬ陶酔の 怯えよ
む・胸      胸乳にひときわわななく 貫く痛みよ
う・後ろ手縛り  後ろ手の 縄尻引かれ 恋い慕う酔い心地よ
ゐ・犬 犬になり ただひたすらに 仕える喜び
の・ノーズプレイ ノーズプレイ フェチな気持ちに 拘る真髄
お・お医者ごっこ お医者さん、伸ばすその手は悪魔の手
く・口枷 口枷に くぐもる悲鳴の 痛々しい顔
や・野外露出   野外での 破滅へ向かう 露出の戦慄
ま・股縄 股縄の 痛みと一重 甘き昇天 
け・契約  契約とは 名ばかりの仮装 愛の誓いに
ふ・フィスト   ファック フィストする こぶしに握る 互いの命運
こ・言葉責め   言葉責め 想いのたけは 途切れる間合いに
え・M字開脚    Mの字に 綴る苦しみ 開脚の枷
て・貞操帯    貞操を守り抜くと誓えども なおも辛い欲望の火よ
あ・足枷     足枷の 重みが繋ぐ 空に舞う人
さ・逆さ吊り   逆さ吊り もがきあがけど 逃れえぬ「時」
き・○縛     ○縛の 揃う縄目に 希求する美 
ゆ・指サック   指サック 仕事の合間に 妄想し
め・目隠し    目隠しに 隠れる心 その恥ずかしき夢
み・水責め    水責めに掛ける想いは その命の重さ
し・自虐     自虐する 想いは反転 生きやすし瞬間
ゑ・えすえむ   SМを 意識した日は 自我の目覚めと
ひ・びざーる   ビザールの 変わり種さえ 同じ身内と
も・木馬    木馬の名 かわいらしさは皮肉な激痛
せ・全頭マスク  全頭の包まれる闇 安息と恐怖
す・スレイブ   スレイブは 主に繋がれるこそ 至福の時と
京・今日で打ち止め

 始まったのは2007年の3月3日だった、いろは歌留多ですが、ようやく終わりになりました。足かけ2年もかかっちゃったよ。(汗)
その間に、私の毎日にもいろんな事があり、また、いろんな人とネットで知り合う事が出来ました。SMについても、いろんな考え方、いろんな嗜好を教えていただいきました。
 この後はどんな出会いが待っているのかなぁ。引き続きよろしくお願いします。次のテーマを探して、波間に漂い出ながら、懐かしく日々を振り返ってる私です。





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    2008

12.05

ネット調 教・12(最終)



初めから読む

焼かれ、焼きつくし、身を滅ぼすのが定めと知る


 

「さて、望んでいたのはどちらの方かな?」

「ゆみかが、そうしたのは、私に命じられたからだと確かに言えるかい?」

「ゆみか自身は、本当にそれを全然望んでいなかったと?」

「君が従っている私という存在はだれだ?」

「この文字を綴っている人間が本当はどんな人間なのか考えた事があるかい?」

「私、私、こんなに長い時間をあなたと過ごして来たのよ。あなたがどんな人だか知ってるわ。だから、私、私・・・、あなたの全部見せるって約束したのにっ。」

「では、現実の世界で私に会った時、目の前にする男に、君が嫌悪を感じないという保証がどこにある?君は私の歳を知らない。私の容姿も、職業も、本当の意味でどういう性格なのかも、どんな声で話し、どんなしぐさをするかも知らない。その事をよく考えてみた事はあるか?
会えば、幻滅し、こんな男に従うのが嫌だと思うかもしれない。」

「君を支配しているのは、現実の男では無い。君が作り出した幻想。文字の中だけの物。本当の私ではないんだ。実際に会えば、ゆみかは、くるりと背を向けて逃げ出し、私の事を二度と思いだしたくもないと言う可能性を考えた事はあるかな?」

「君が従ってるのは本当に男だと?女である可能性を考えた事はないのかい?私が、今現在、他の女を抱きしめながら、君のその姿を嘲笑っていないと信じる根拠はどこにあるんだ?」

「それでも・・・」

 私は、いっぱい涙のたまった瞳を見開いて、流れる文字をただ見つめた。

「それでも、私に従いたいと言うの?君を握っているのは悪魔かも、人殺しかも、ああ、そんな見目の良いものですらなく、薄汚い腹の突き出た親父かもしれないと思った事はないのか?
本当に、そんな男に会いたい?受け入れられない現実と向かい合いたいのか?」

 喜びがすっかりと抜け落ちて、足の先から段々と冷え固まった身体に、どっと血の奔流が戻って来た。何も考えられず、ただ、勝手に言葉がほとばしり出て来た。自分でも知らなかった、何かが、胸の中から、押さえようもなく、溢れ出してくる。

「だとしたら、望むところだわ。嫌がる私を捕まえて、殴りつけ、無理やり引きずって、はいつくばらせて、足蹴にすればいいじゃありませんか。閉じ込めて鍵をかけ、泣き叫び、助けを呼ぶ私を思いのままになさったら?酷い目に合わせて、めちゃくちゃにすればいいのよ。支配するために!私の意志を奪い、ぐうの音も出なくするためにっ!」

 肩で息をしながら、自分自身が言った言葉に呆然とした。何と言う事を。これが、私の本音なの?信頼や、愛はどこに行ったのだろう。一緒に過ごした長い時間を埋め尽くしていた、あの心地よい、共有して来たその気持ちは?

 長い沈黙の後に、コロロンと、いつもの音が私を呼ぶ。

「わかった。そうしよう。」

 その瞬間、自分が引きかえせない闇の中へ足を踏み入れた事が分かった。まったく正体のわからぬ男に自分を引き渡し、自分の人生をめちゃくちゃにする権利を渡してしまったのだ。自分自身の手で、悪魔を呼び入れて、契約に署名するように。
 私の心の、奥底に眠っていた、願望が姿を現し、私はそこへ身を投げ入れた。一度、押されてしまった刻印は、二度と消えず、たとえ、男がそう振舞わなかったとしても、もう、二度となにも無かった昔には戻れない。
 私は、自分自身がどんな女なのか見つけた。主を見つけたと確信出来てもいないうちに、自分自身を売り渡してしまった。
 気がつくと、あふれた涙が、びっしょりと、頬を濡らしていた。ぽっつりと、闇の中に放り出されたように、頼りなく、寂しく、一人ぼっちのような気がした。

「ゆみか。」

「いまのうちに、好きなだけ泣くがいい。」

「それでも、私は、おまえを愛おしく思うよ。そうして、見知らぬ男に、身を任せるお前を・・・。」

 私は、もう一度、背もたれにしがみ付いて、声をあげて泣いた。私は、見も知らぬ男の物になり、そして、その事が、嬉しかった。嬉しくもあり、恐ろしくもあり、それでいて、私は、例えようもなく孤独だと言う事に気がついた。




 現実の世界で、蓮さんと会う日が着た時に、駅の改札口で待っていたのは、わたしの運命そのものだった。
「やあ。」
ネットで聞いていた、あの言葉が音声となって流れ出した。想像していた絶望も、戸惑いすらも無かった。私は・・・ただ、春の日差しのように差しのべられた手に、跪き、口づけた。

 初めまして。


 そして、これからの人生をすべて、あなたに・・・。



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    2008

12.04

ね・ネット調 教11




初めから読む


身を任せ、支配される事の甘き心地に


 

 動けない。

 カメラの前で私は硬直していた。
 息をする度に、滴り落ちる滴が、溢れる寸前の器の上に落ちていくのが感じられる。一滴、また、一滴と。私は、身動きもならず、その有様を見つめるだけ。溢れさせないように、ただ、固まって、じっと耐える。
 もう、だめ。もう、耐えられない。心の中で繰り返しながらも、どうしようもなく、歯を食いしばるしかなかった。強張った内腿が細かく震えだし、胸苦しさに、張り裂けそうだった。

 コロロン・・・・。

「よく我慢したね。」

 涙に霞む視界に、文字が現れる。

「いきなさい。」

 言葉とともに私は弾け。宙に投げ出された。
 触れてもいない身体の中を、鋭い喜びが駆け抜けていく。
 何が起こったのか、自覚する事も出来ないうちに、私は、本能的に、膝頭を胸に引きつけて身体を捻じり、椅子の背中にしがみついた。転倒しなかったのが不思議なくらいだった。天地がひっくり返り、自分がどちらを向いているのかも分からない感覚に翻弄される。

 なぜ?どうして?何が起こったの?

 打ち寄せる波が次々と襲いかかってきて、必死に背もたれにしがみつく私を引きずりまわす。我に帰るまでの長い時間を、私は、ただ、そうして何かに摑まる事でやりすごすしかなかった。

「私に、何をしたの?」


 言葉を口に出せるようになるまで、どれくらいの時間が経ったのだろう?その言葉は、考えて言ったものでは無かったし、ふさわしいものとも言えなかったけれど。

「何も・・・」

「何もしていない。君が、自分でしたんだ。」

 自分でした?私は、あっけにとられて、現れた文字を見つめた。意味が分からず、思わず、いやいやと、首を左右に振る。

「そんなはずないわ。だって・・・」

 今まで一度もあんな風に深い快感にとらわれた事はなかった。それも、身体に触れたわけでもなかったのに。それに、それに・・・

「蓮さんが、しろって言ったんじゃないの。」

「言ったね。でも、そうしたのは、ゆみかだ。」

 私は、ぽかんとその文字を見つめた。そんな事ってあるだろうか?私は、彼に約束し、そして従って来たのだ。それなのに、こんな事態を迎えて、どうやって自分で納得したらいいのかも分からない私を、蓮さんは、放りだそうとしている。

「違うわ。蓮さんが、そうしろってっ!」

 思わず大きな声を出してから、はっと、口を押さえた。まるで、反抗期の子供のような振る舞いだった。赤くなり、口調を落として囁く。

「蓮さんが、脚を机の上にあげろって言ったから・・・・。だから、私。連さんが、言ったからしたのに。」

「そうかもしれない。でも、私が、ゆみかの足首を掴んで、無理に開かせたわけじゃない。」

 私は、現れた文字が暴き出す現実に息を呑んだ。

「脚を開いたのはゆみかの意志だろう?」

 身体がとろけてぐずぐずになっていた私は、冷たいものを押し当てられた感覚にぞっと総毛だった。

続く…


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    2008

12.03

ね・ネット調 教10

初めから読む


朽ち行き壊れる事さえも 愛しいか


 

 膝がしらが震え、勝手に閉じようとする。それを引き戻し、姿勢を保とうと力を込めては、はっと我に帰ると事の繰り返しだった。
 開こうとする力も、閉じようとする力も自分の物だった。心の底から、恥ずかしさの余り脚をつぼめたいと願う想いも・・・。連さんに応えてすべてをさらけ出したいという想いも・・・。淫らに、足を開く女に落ちていきたいと思う願いも・・・。慎ましく咲き初める蕾でいたいと願うのも。全部、私だった。

「左足の踵を椅子の上に乗せなさい。膝をひきつけるようにして」

 ああ・・・。

 お尻を基点に椅子の背もたれに身体を預けて、命じられた姿勢を取ろうとする。
 
 膝がしらが震え、内腿の筋肉が攣りそうになる。目を閉じて、何も考えず、踵を引き寄せる。もう見せてしまってるのだもの。それも、k右足の踵を机の上に乗せたあからさまな姿勢で。今更、違いはないはず・・・。何度も何度も、自分自身に言い聞かせ続ける。

「目を閉じるな。」

 椅子の座面に持ちあげられていた左足は、その言葉にびくんと撥ねて、また床に落ちてしまった。全身に熱が回り、かあっと火照る。汗が噴き上がる。脚を椅子の上に持ち上げM字に開く。ただ、それだけ。たったそれだけだ。それが、こんなに自分をうろたえさせるとは、そう、自分が恥ずかしさに、震えている事が、その事が尚更、感情を高ぶらせているのだった。
 おずおずと、瞼を開けて、カメラが動いているしるしの赤い光点を凝視した。あの向こうに、蓮さんがいる。そして、私が恥ずかしさに震えているのを見つめている。その前で私は欲望をさらけ出す。
 じわっと蜜が沸き上がり、滴る感覚がした。晒しあげられた性器はそれ自体が独立した生き物のようにぷっくりと膨れ上がり、ぬめぬめと伸縮を繰り返して、男を誘おうとしている。自分の意志とは無関係に、浅ましい蠕動をひけらかし、喜びをむさぼろうとして。

 思わず、吐息が漏れた。桃色に、周囲に靄が広がり、私の脳を埋め尽くす。目を見開いて、赤い光を見つめながら、私は、またそろそろと膝を持ち上げる。また、一からやり直し。最初の場所から、自分を励まして行かないと、脚を床から浮かす事さえ、困難だった。そして、脚を持ち上げようとすると、しぼりあげられるような胸苦しさとともに、下半身に、快感のうねりが広がった。

 これは、なんなのかしら。

 私を襲うこの、快感は?

 脚を動かした事で起こった刺激だ。

 ただ、それだけで・・・・私は

 昇り詰めようとしていた。

「いっていいとは言ってないぞ。」

 コロロン。

 私は、彼にに、身体の反応を見透かされた事に戦慄した。その瞬間、踵は椅子の上に着地し、鋭い、快感が身体を走り抜ける。
 息を吸いこみ、歯を食いしばり、私は、自分を引き戻した。正気を保とうと、一層目を見開いて、赤い光を見つめる。ゆっくりと世界が狭まって、存在するのは、欲望に満ちた自分の身体が開いている半円とそれが収束するその赤い光の一点だけだった。

 呼吸する度に、満ちてくる物がうねり、私を翻弄する。持ちあがり、それから、弧を描くようににゆっくりと落ちる。くりかえし、くりかえし・・・。私という器の中に、いっぱいになる。皮膚が薄く薄く伸びて、パンパンに張り詰め、わずかでも刺激を与えると、弾けそうだった。

続く…

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    2008

11.14

ね・ネット調 教・9

初めから読む


室の中に発酵する そして朽ちる


 

 男の前で、自分自身で進んで足を開くのは、無理やり開かせられるよりも恥ずかしい事なのだろうか。「恥ずかしい」という言葉は、どこか自分を煽るためにあるような気がしていたのに。ほんとに恥ずかしいってどういう事なのか、今、私は、自分の身体で知った。

 せりあがってくる熱い塊が喉の所をふさぎ、声を立てる事も出来ず、身体中が熱くほてってくる。足を上げるのがひどく困難で、自分の足じゃないように思いどおりにならない。膝を開いて、すべてをさらけ出して、そのいたたまれなさに、後戻りしたい衝動が突き上げてくるのに、身動きが出来ない。身体中から、汗が噴き出てくる。膝が、こわばり、力が入りすぎてぶるぶると震える。

 心の底から、足を閉じたいと思っているのに、閉じる事が出来なかった。足の間が燃え上がるような熱さが拡がり、その火照りは、欲望の衝動を自分につきつけて来ている。見られながら、触れたいと思う衝動。思う存分、快感をむさぼりたいと思うその衝動が、私の女芯に現れている方な気がして、ますます、身を縮めながらも、もっと開きたい、さらけ出したいという、矛盾した気持ちにどうしていいのか分からなかった。

 長い時間が足の間を流れていく。触れてさえいないのにぷくりと中心から蜜があふれてくる。PCの画面に、映る上気した自分のあさましい格好をした身体。小さなその画面の中でさえ、女芯が膨らみを増して、ぬらぬらと自己主張をしてきているのを感じて、私はますます身をすくめた。
 身動きがならない。息をつくのさえ怖しい。何か、言って。どうにかして。私を揺さぶって。めちゃくちゃにして。この、恥ずかしさを忘れさせて。心の中で虚しい願いが駆け巡っていても、それを口にする事が出来ず、ただ、ひっそりと、きずかれないように、息をひそめるだけ。

 コロロン。

 はっと、我に返り画面を見つめると、新たな文字が流れはじめていた。

「ゆみかは、随分と淫らな生き物を身体に飼っているんだな。」

「いやっ・・・!」

 その言葉が自分の足を逆撫でして足の間に触れたような気持がして、思わず顔をそむけて、踵をつっぱり、身体を固くする。
 だけど、画面から目を逸らし続ける事は出来なかった。続きを知りたい。何か、言葉をかけて欲しい。ただ、じっとと足を開いているだけに耐えられず、私は、また、おそるおそる画面を見る。

「欲しがっている。ひくついて、伸び縮みして、何かを銜え込みたがっている。これは、ゆみかが、そうさせているのかい?ゆみか自身が淫らな女なのかな?」

「ち、違います・・・・。」

 囁くようにしか、声を出す事が出来ない。違わない。違うはずがない。私は、こうやって男の前に足を開いて感じている。見られる事に、興奮して、身もだえして、もっともっとと願いながら、動けないでいる事にさえ、喜びを見出している。

「そう・・・?ゆみかは慎ましい女だものね。淫らなのは、お前じゃないのかな?きっと、そうさせた私なのだろうな。ぬらぬらと濡れ光って、物欲しげにぱくついているこの生き物は、私が飼っているのかもしれないね。だったら、私の自由にしてもかまわない訳だ。もう、ここは、ゆみかのものじゃないからね。」

 連さんの言葉が、手になり、指になり、そっと寄せてくる吐息になり、触れてくる唇になり、舐めあげる舌となって、私の欲望に膨らんだ花弁をなぞり上げていく。気が狂いそうなもどかしさが繰り返し寄せてくる。今、触れたら、私は簡単に逝ってしまうような気がした。
 触れたい。逝ってしまいたい。この、中途半端で、いたたまれない焦燥から逃れたい。私は、そろそろと、手を伸ばした。

「触りなさいと言った覚えはないよ。」

 コロロン。その音に私はすくみあがり身を縮めた。その言葉は、私の、身体の中心を、稲妻のように駆け抜けていった。

続く…

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    2008

10.31

ね・ネット調 教・8



初めから読む


堕つる果ては 暗き穴なりと


 

「強く、もっと強く」

 現れる文字に、誘われる。自分の指できつく捻り上げる乳首に、爪を立てた。もう一杯に張りつめていた乳房が一層掌の中で重くなったような気がして、私は恥ずかしさに赤くなった。
 身体の中心にともった灯が、じんわりと拡がって来る。欲しい。強く。力で私を引き裂く何かが。もどかしく、乳首を捻りながら、私は腰を椅子に押し付けていた。
 どうしようもない渇望が、身体をひりつかせている。

 そういえば、蓮さんに、身体を見せたその日から、私は、自慰をしていない事に気がつく。すべてを見せるように約束したせいで、私の行動はおのずと制限されてしまっていた。布団の中だから、暗くて見えないから、そういう理由は私の中では成立せず、蓮さんに、見せられないような事は出来なかった。

 毎日、一人の人を想い、毎日、その人と淫らな話をする。私の中で膨れ上がる欲望は出口が無く、渦を巻き、やがては、深い夜の中で鎮静を向かえ、そのまま静かに降り積もって行く。まるでビロードのように手触りがよい苔の膨らみのように、すっかり熟しきった水蜜桃のように、暖かく、押すと凹むしっとりと濡れた存在が、私の中に出来上がっていた。
 ギュッと押しつぶしたい。そして、そこに確かな痕を残したい。私が、考えた事。私が求めている事の「しるし」を・・・。だが、それを蓮さんに見られるのが怖かった。はっきりと残るその痕を、彼はどういう目で見るのか。そう思うと、私の欲望を見て欲しいとは言えない。

 私の中で、求める気持ちと畏れる気持がいっぱいになって、私を身動きできなくさせている。
 蓮さんの前では、何も隠さず、生活のほとんどを、そして、何も身にまとわぬ身体を見せているのに・・・。あけすけに、誰にも話さなかった、過去の性体験を、自分の身体がどう反応したのかを打ち明けているのに・・・。
 自分が、縄に捕らわれて、いかに乱れ、どれほど恥ずかしい事を口にし、自ら行動したのかをすべて知って欲しかった。私がどれほどにマゾヒスティックな欲望を備えているかを。すべてを知って、それを受け入れて欲しい。私に応えて、私をいたぶって欲しい。

 そう願っているのと裏腹に、何も知らなかった乙女の頃のように、彼の言葉に反応している事すら知られまいとして、身をすくめている自分がいた。

 感じている事を

 知られるのが・・・恥ずかしい。

「右足の踵を、机の上に乗せて」

 その言葉が画面に現れた瞬間。私は身震いした。寒かったのではない。あまりにも強く、細く、深く、その言葉に貫かれて、私はその喜びに震えていたのだった。

続く・・


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    2008

10.27

ね・ネット調 教・7

初めから読む


膨らみ開く 花びらを摘む人よ むしり捨てよ


 

 見られているかもしれない。そう思いながら、カメラの前で生活する事に、慣れる事は無かった。いつも、常に、どんな時も、カメラを意識してしまう。本を読み、爪を磨き、手紙を書く。
 私はテレビを観る事が無くなった。怠惰な様子でテレビの前にいる姿を、彼に見せたくなかった。
 空いた時間に、英語の勉強を始めたり、新聞をくまなく読んだりする。部屋をきちんと片づけ、小まめに掃除をするようになり、今まで以上に、服装や、髪型を気にするようになった。カメラの前では、いつも素裸だというのに、部屋の外でも美しく見られるように、装いを凝らす。
 きびきびと動くように、心がけた。背筋を伸ばし、手足を伸ばす。指先まで美しく見られたい。そう願い、行動する。そして思いを巡らす。私を見ている人は、どんな人なのだろうか・・・・と。

コロロン・・

 連さんが話しかけてくる。その音は、私の心を弾ませる。呼ばれれば、私はPCの前に駆け寄るようになった。ウェブカムを頭につけるのももどかしく、パソコンに浮かぶ彼の文字を追う。
「今日は、仕事はどうだった?」
 何気ない質問から始まる蓮さんとの会話に答えて、私は、ドアの外での行動を、逐一、蓮さんに報告した。天気の話さえ、彼に伝えるのが嬉しかった。そして、私の一日のすべてを彼は把握するようになる。ランチに何を食べて、誰と買い物をし、何を買って、どこへ行って・・・・。何を思い、そして、どんなに急いで帰って来たか。

 それから、会話は雑談に移って行く。蓮さんは文字で、私は言葉で。ごく自然の流れで私の方が多くの言葉を口に出す事になる。私の何もかもを蓮さんは知って行く。私に与えられる、蓮さんの情報はあまりにも少ない。
 選ばれた、言葉。あの独特の不思議なリズムの言葉・・・・。
それから、SMチャットで出会った私たちの話は、自然にSMの事に移って行く。

 どういうことされたことがあるの?
 どんなふうに?
 どう感じたの?
 何を思った?
 もう一度してみたい?
 だとしたら、どんなふうに?
 なぜそう思うの?

 質問の合間に、蓮さんが淡々と自分の話をする事もあった。今までに何十人もの女性と付き合い、そして、通り過ぎて行った思い出を。聞いているだけで、鳥肌が立ってくるような、責めの話。彼の言葉に渇えている私は、その一言一言を食い入るように見つめてしまう。
 身体の中心が熱く燃え、眼はうるみ、乳房が内側から張りつめてくる。とろけるような感覚が足の間に広がり、私は、それを蓮さんに隠そうとするのだけれど。もじもじとする身体の動きは、誰が見ても不自然だっただろう。

「乳首が立ってる」

 指摘され、反射的に、私は掌で乳房を覆ってしまう。

「ゆみか」

 我に返った私は、びくっ!っと、震え、おずおずと、覆った掌をどけるしかなくなるのだ。興奮のために、パンパンに膨らみピンと皮の伸びた乳房は、ちょっと触れただけで、じーん・・・と痺れるような心地よさが広がった。

「あ・・・・・」

「感じたね」

「いけない子だね。黙ってしようとするなんて」

「違います。私・・・・」

「口答えしてる」

 唇を噛んで、私は言い訳の言葉を押し戻した。

「悪い子には、お仕置きしないとね」

 え・・・。その文字は、まるで点滅するかのように、私の瞳に飛び込んできて、視界いっぱいに拡がった。聞こえていたはずの、流れていた音楽がいつの間にか途切れ、辺りはただ静謐な空間だけのようになる。その真っ暗な闇の中に、欲望でいっぱいの私は、浮いている。見えているのはその文字だけだった。

 世界中のなにもかもが無意味になる。あるのはネットの先につながる人だけ。この一本の線の向こうに座っているはずの誰かだけ。私を支えている何もかもが消え去り、あまりの不安定さに、私はしがみつく場所を探そうと、ノートパソコンの上に、乗せていた掌の膨らみを、PCに、ギュッと押し付けた。

「乳首を摘んで」

 私は瞬きした。意識しないはずの、瞬きをした事が分かるくらいにはっきりと。いつの間にか唇が小さく開かれ、私は口から空気を求めて胸を上下させている。身体に残っているさっきの快感が、さざ波のように体いっぱいに拡がった後に、ゆっくりと、身体の中心へと戻ってくる。そして、熱くなった下腹部は、その波に揺られるかのように、規則正しく呼吸していた。膨らみ、そして、縮む。その度に、熱は高まり、心地よさが駆け巡る。
 私は、おずおずと、右手を持ち上げた。そして、左側のツンと尖った乳首を摘んだ。じん・・・と、さっきよりも強い快感が乳房に満ちる。

「もっと強く」

 愛撫しちゃいけない。お仕置きなのだから。私は指先に力を込めて乳首を押しつぶした。

「強く捻じって」

 痛みが・・・・拡がった。




続く…


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    2008

10.23

ね・ネット調 教・6

初めから読む

求められ差し出す心 そのしぐさに映る


 
 生活のすべてを見せる。

 それは、考えていたよりもずっと不思議な行為だった。パソコンが有線だったために、つながった線いっぱいに、パソコンを移動してカメラの位置を調整しても、トイレやシャワーの中までは映らない事が救いだったけれど・・・。それでも、蓮さんが言うように、ドアを開けて、用を足すことは、私が排尿する回数を蓮さんに教える事になる。

 家に戻れば、私は、荷物を降ろすのもそこそこに、パソコンを立ち上げる。ポーンと、起動する音を聞くだけで、胸がドキドキしてくるのだった。起動したばかりで動きの遅いパソコンにイライラしながらメッセを開く。
 連さんのメッセはいつもアイコンが緑色だった。自宅でのお仕事でずっと家にいるらしく、めったに、その色が消えることは無い。私がメッセを上げてほんの2、3秒後には、彼が「おかえり」と言ってくれるのが常だった。
「ただいま、蓮さん」
「おかえり、ゆみか」
 毎日、繰り返されるその言葉に、私はほっとする。今日も、彼がそこにいるという事を確認して・・・・。そして、蓮さんのいる家に帰ってくるような、そんな感覚にとらわれるのだった。

「服を脱いで身体を見せてごらん。」
 おかえりの挨拶のすぐ後に、私はいつも服を脱ぐ事を求められた。蓮さんの、言うがままに服を脱ぐ。
 何度脱いでも、下着を取る時は身体が熱くなるほどに恥ずかしい。思わず手で胸をおおいたくなるほどに・・・。でも、それは許されていない。ギュッと目を瞑り、赤くなった頬をそむけて、その瞬間に耐える。
 姿勢を正して、息をひとつついて・・・。それから、パンティを脱ぐ。脱いでる動作が綺麗に見えるように、無理をして、立ったまま足を抜こうとしてしまう。その動作に足の筋肉がひきつりそうになるくらいに。
 そして、向き直る。そこに私を見つめる人がいるはずの方向へ。手の中に、丸くなった下着がある。私は、いつもそれをどこへやったらいいのか困惑した。ぬくもりが残った下着を掌の中に隠して、こっそりと、蓮さんを盗み見た。
 私を見ている人。私だけを見ていてくれる人を。

「ひろげて見せなさい。その手の中の物を」
 偶に、蓮さんは、そう言って来る事があった。
(いやぁ・・・いやいや、見ないで・・・。そんな事させないで)
 口に出せない言葉を、胸の中で100回繰り返し、毎回、ためらって、ためらって、身体中が真っ赤になりながらも、私はそっと下着を広げて、蓮さんにそれを見せなくてはいけない。蓮さんは、その行為を気まぐれに求め、求められない時は、私は、ほっとしたような、物足りないような気持ちに襲われた。
 それから大急ぎで、服を集めて抱えあげ、洗濯機に入れに部屋を出る。後から蓮さんの視線が追いかけてくるようで、私はお尻を振らないで歩いているか、とても気になってしまう。
 部屋のドアの向こうへ行く時に、ちょっと振り向いて、カメラの赤いランプを確認せずにはいられない。点いているのはあたりまえなのに、その赤い点が、蓮さんが見ている証のように思えるのだった。

続く

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女の子だってカリビアンコムを観たい♪
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    2008

10.17

ね・ネット調 教・5

初めから読む


幻の夢路の堕つる 春 吹く風に


 
 脱ぐ・・・

 昨日までと同じ自分の部屋。カメラが動いている証拠に、赤い光点がついている。ただそれだけ・・・・。でも、このカメラの向こうに誰かがいて、私が服を脱ぐのを見ている・・・・。それは、私が蓮さんと呼ぶ人。私にゆみかと呼びかける人。
 肩をブラウスの布が滑り落ちる。意識すまいと思っていても、誰かの前で服を脱ぐ時のいつもの順番になり、スカートを降ろす時に、私はカメラに背を向けていた。

コロロン♪

 メッセンジャーが、音を立てる。それは、蓮さんが何か言葉を送ってきた印。私は背を向けたままびくっと撥ね上がり、恐る恐る、PCの方を見た。何の文字も無い空白。ただ、蓮の発言という文字だけが送られてきていた。
 そこに無言の叱責を見たような気がして私は震えあがった。喜んでもらえると思って、M女という言葉を口に出した時の、拒絶された感覚がよみがえる。

 約束。

 逆らう事は許されない約束。もう、動かしようがなく、そこから逃れるためには、PCを切るしかない。蓮さんとの関係を断つしかない。
動悸が跳ねあがり、身体中が熱くなる。ギュッと目を瞑って、うつむいたまま、私はPCへ向き直った。カメラに映るように、一歩前に出る。メッセンジャーの下の窓に、服を脱ぐ私の姿が映っている。

「助けて」

 心の中で思わず言わずにはいられない。ネットの向こうで、見ている人にすがらずにはいられない。何か拠りどころが無ければ、こんな事は出来ない。服を脱ぎ、下着を取る。何も着ていない私を、あなたは見る。
 恥ずかしさに、身体が熱く燃え、肌が赤くなっているのが分かった。ちりちりと、肌の上を蓮さんの「視線」が滑って行くような錯覚に、身震いする。汗が吹き出し、足の力が抜けてしゃがみこみたいくらいだった。

「蓮さん、見て。」

 見てください。私を。何も纏わない私。何も繕わない私。私自身を・・・・。あなたの所へ、堕ちていく私を。


続く・・・

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    2008

10.15

ね・ネット調 教・4

初めから読む

境界の 分かたれた一つ家に 恋しき人と共寝する


 
「ひとつあなたに聞きたいな」
「何ですか?」
「あなたのような綺麗な女性が、なぜ、毎晩ネットの中にやってくるの?私のような誰とも分からぬ男と話すために。あなたの恋人に悪いような気がする」
「私、そんなに綺麗じゃないです。それに、お付き合いしている方、今は、誰もいないんです。」
 嘘だ・・・・。私は、自分の容姿が男の人に与える印象には、自信があった。小さい頃から、可愛い、綺麗、と言われる事に慣れ親しんでいた・
「ほんとに彼はいないの?」
「ほんとよ」
「だって、私、どこにもいかないで、ここにいるでしょ?」
 言葉に出して気がついた。私は、何もせず、どこへも行かず、毎日、まっすぐ、PCの前に戻ってくる。蓮さんの所へ戻ってくる。
「でも、そんなに綺麗じゃないって言うのは・・・・謙遜だね。」
 考えていた事を、言い当てられて、私はひやっと背筋が凍る。キーボードの上の指が動かなくなり。私の頬はこわばった。

「このカメラはずっとつなげて置けるのですか?」

「ゆみかさんの一部始終をずっとみつづけれるのですか?」

「ええ、つないでいれば、ずっと・・・・」
 どこか、怖い・・・。なぜか、心細い。私の声は震えた。
「ほう・・・・・。」

「毎日、あなたをみていたいな。ゆみかさんのすべてを。」

「無理かな?」

 私は、びっくりした。言われた事の内容では無く、もどかしく、縮まらなかった距離が、突然無くなり、蓮さんの部屋と、私の部屋が繋がったって、一つの空間になったような気がしたからだ。
 私は丸くなり、彼の掌の上に乗る。そして何も考えずに、まどろむ。

「いいえ・・・・。ほんとに、見ていてくださるの?」
 聞こえてくる自分の声には、まったく、現実感が無かった。
「では 約束しましょう。ゆみかは家に帰って来たらPCを起動してカメラで、私に生活のすべてを見せる。そして、また、翌朝、仕事に行くまでカメラを切ってはならない」

「できますか?約束をして、それを破るようなら、私はあなたを許さない」
 返事をするのも忘れて、その言葉が私を絡みとろうとしているその瞬間を、私は味わい尽くそうした。貪欲に舌をのばしてしゃぶるように。次の瞬間には、消えてしまう喜び・・・。自分の中にそっと耳をすます。何かが起ころうとしている。捉えられ、逃れられなくなる。巻きついてくる、何ものとも知れぬ物が。周囲の闇が急速に縮まり、私はどんどん小さくなっていく。小さなガラスの壜に入り、誰にでも引き渡せるように小さく。どこへも行けず、誰にもふれられない。容れ物の中に入った私。
 応えれば、どうなるか分からない。でも、約束しなければ、私は、これを無くしてしまう。大きな掌の上にいるような・・・この心地よさを。

「無理ならば約束はしないでおきましょう
すべての意味はわかりますか?
本当にすべてですよ?
寝ている姿も
服を着替えたり
お風呂に入ったり
自分自身を慰める時間も
それから、トイレの扉も開けて
私に見えるようにして用を足す
ずっと
ずっと
私はずっとあなたを見ていたいと思います
ゆみかのすべてを」

 ああ・・・これを振り切って逃げるなんて、私にはできない。・・・・ううん、したくないんだ。私は、彼に、捕らわれたがっていた。彼に支配される事を望み始めていた。でも、そんな事が出来るんだろうか?何もかもすべてだなんて。今、ここで、約束したら、もう、後戻りはできないの?嵐のように、めまぐるしく、変わっていく揺れゆく状況と、ガラスの中の小さな私はまるで別の人間のようだ。
 誰かの手の中の容れ物に入って、私の存在は、私の物では無くなる。食べるのも、眠るのも、起きて、歩いて、服を着て、そして息をする事さえもすべてが、誰かのためにだけにある。そんな生き物になった私。なにも、考えず、ただ、丸くなって眠るだけの猫のように。

「ええ・・・」
「本当に 本当に大丈夫ですか?今なら断られても私は失望したりしない」
「それは、私が断っても、蓮さんは、メッセをやめないって事なの?」
「そうですよ。ここでその約束をしなくても、メッセはずっとつながっている。何も心配する事はありません」

 生きにくい日々。私がずっと不思議に思っていた、その謎の答えが、この先にあるような気がした。それとも、それはただの錯覚なのだろうか。自分の中に現れたその迷路の扉を開いて、私は、自分自身を誘いこむ。自分自身の足で私は迷路に踏み込んで行く。
 そして、自分の手で扉を閉めて、鍵を掛ける。もう、決して逃げられないように・・・・。

「約束します。蓮さんに・・・・・蓮さんに、全部を見せる事を」
「約束した以上、もう、あなたは私の物」
 突然、自分が約束した現実と、その事の意味する恥ずかしさに捉われた私は、そのまま、ネットの中に、消えてしまいたかった。そんな約束をする自分を、蓮さんに曝け出してしまった事が。
「もう、あなたは私から逃げられませんよ。」
 とんでもない事を約束し、自分を異常な空間に閉じ込めてしまった。けれど、その鍵を握っているのは自分自身。PCを、切ってしまいさえすれば、何もかもが、無かった事になる。
「ゆみか?」
「ああ、私・・・・・」
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫。・・・・・・大丈夫です。」
「そう、でも、もう、時間も遅いし、そろそろ:寝なさい。」
 もう少し話していたい。でも・・・そう、主張するのはいけない事のような気がした。
「おっしゃる通りにします。もう寝た方がいいの?」
「寝ている間も、ずっと見ているよ。明日も、そしてこれからもずっと・・・・・」

「では、服を脱いで、ベッドに入って」

 服を脱ぐ?カメラの前で?

 私は、約束した。この人に・・・

 本当の名前も知らず。住所も知らず、顔も知らない。ネットで会ったばかりの人に。私のすべてを見せると。
 今までの私がしてきたこととは全然違う。
 分け合う快楽はSMだと言っても、今までの事は、恋人をネットで探しているのと変わらなかった。だんだんと親しくなり、携帯メールを教え、画像をかわし、電話をかけて・・・。お互いの姿を観て、住所を知り、現実に会う。その途中で、相手が気にいらなかったら、そこで終わり。それなのに、今、私は、存在すらも確かじゃない人の前で服を脱ごうとしているのだ。彼の紡ぎ出す文字だけを頼りに・・・。その言葉だけを信じて。
 逃げだしたいような恥ずかしさと、しようとしている事の異様さと。それから、不思議な恍惚感に酩酊しながら、私はブラウスのボタンに手をかけていた。


続く・・・

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    2008

10.14

ね・ネット調 教・3

初めから読む

灯火に 重ねる言葉うつりゆく 幻は 夢か現か


 
 それからは、毎日、彼と言葉を重ね続けた。丁寧な口調で、優しく「ゆみかさん」と、呼んでくれる蓮さん。時々、突き放すように「ゆみか」と強い口調で言う蓮さん。でも、私はどこかもどかしくて、物足りなかった。蓮さんは、私の事欲しくないの?いつまでたっても私たちの距離は縮まらないよう・・・。

 驚かせてみたい。そして、私をもっと好きになってもらいたい。ううん、そんなのだめ。だって、私はMなのだし、じっと待って、ご主人さまの言うとおりにしなくっちゃ。

 ・・・・・ううん、違う。

 この人は私の主人じゃない。私は彼の所有物じゃない。私は受け入れてもらえなかったんだった。私たちの間には、つながりがなにもない。メッセをきってしまえばそれっきり、二度と会えなくてもどうしょうもない。眠りにつく時にはその人の名前を呼び。朝起きれば彼の言葉を思い浮かべる。昨日話した事。一昨日話した事。その前の日に話した事。頭の中でその会話を順に辿って行く。
 緑のランプを見れば喜び、グレイになっていれば、寒々しさに震える。人差し指で画面をそっと撫でて、それからきつく目を閉じる。膨らんでくる思いを、押し殺す。だめだめ、考えちゃダメ。私たちはなんでもない。ただメッセを交わすだけの間柄なんだから・・・。

「カメラがあるの。私の身体をみてくださらない?」

 繰り返す楽しいはずの雑談が、ぷっつりと途切れた。ああ、また、やってしまった。毎回、後悔しているのに、なぜ、自分から、責めを求めてしまうような事を言ってしまうのだろう?これじゃあ、思い描いているようないい下僕になんてなれっこない。

「ほう」
 
「ゆみかさんの身体。きっと綺麗でしょうね。あなたの声を聞きながら、よく、きっとこんな女性なのだろうな、って想像しているんですよ。」

「よければ、見せてください。」

「それとも」

「命令されたい?」

 私は動けなくなり「命令」という文字をみつめた。そして、何も考える事が出来ないうちに、USBにカメラを引き寄せるとディスプレイにクリップで留め、その接続を差し込んでしまっていた。映像通話のアイコンをクリックする。そして、蓮さんが応じるのを待っている。その時間が、長く、長く・・・。周囲の風景がぼんやりとしてきて、ただ、自分の、心臓の音だけが聞こえてくる。
 すべての現実が遠ざかって行くような気持ちを、何と表現したらいいんだろう。暗い穴の中にじっと身を潜めて、息をするのも忘れて、画面を見つめる。そして・・・・・

 蓮さんの承認の合図を待っている。

「承認されました。」その文字は、暗闇にひとすじの光が差し込んで来るように、私の胸にまっすぐに飛び込んでくる。

「はじめまして ゆみかさん」
「見えている?」
「見えてるよ」
 私、今・・・・・・・・・蓮さんに、見られているんだろうか?
「へぇ・・・」
 一方的に観られている事に、どこか頼りなく不安な気持ちがする。今までの相手は、お互いに、カメラを持っていたから、カメラを繋ぐ事で相手の姿も確認できた、見られているというよりは、会って話す事に近い感覚だったのに。これは、全然違う。

「思っていたより、綺麗なんだな」

「そう・・・」

「とても、美しいね・・・」

 そして、蓮さんの、文字の誉め言葉は、どこか、足場が無い中に浮いているような感覚を私にもたらした。持ち上げる、そして、突き落とす。蓮さんの姿が映るはずの窓の下に、カメラに映る自分の姿を確認する。蓮さんの眼に映っているはずの自分の姿は、四角い窓の中で迷子になってしまった子供のように、頼りなげな様子に見えた。

 どこかへ・・・辿り着きたい。

 誰かに・・・縛られたい。

 そして、身体を裏返して、中身を全部与えたい・・・・。


続く・・・

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    2008

10.11

ね・ネット調 教・2

初めから読む

またたきにに想いをかけて揺れる 遠い灯台 いと哀し



「ゆみかさんは」
「なぜ、私を誘ったんですか?」
「蓮さんの、文字って、まるで私だけに話しかけてるみたいで・・・。だから、ゆっくりお話ししてみたかったの」
「タイピングが得意じゃないのでね」「指を2本使ってぽちぽちと打っているんですよ」
「えー、ほんとかなぁ」
「ほんとですよ」

 なぜ、そんなに優しそうに笑うのだろう。いいや。「ほんとですよ」とだけしか書かれていない文字を見つめながら、なぜ、相手が微笑んでいると思うのかしら。相手が、ホームーページの指示通りにアカウントを取り、インストールを始めるのに付き合いながら、何気なく返ってくる言葉を、繰り返し、繰り返し読む。ほんとですよ、ほんとですよ、ほんとですよ・・・・・相手の言葉が、自分の内側に満ちてくる。

「私、蓮さんの、話し方が好き」
「ただの文字でしょうに」
「蓮さんのほんとの声ってどんななのかしら?」
「おや、これは、そんな事も出来るの?」
「うん、ウェブカムを使えば・・・・」
「そうなの?なにか・・・」

 なにか?なにか?なにか?私の頭の中で彼の言葉がこだました。

「話してみなさい」

 蓮さんが、求めてきている。
「ゆみかさんの声、聞けるのなら是非聞いてみたい。」
 私は、彼の文字を見つめる。彼に求められている。それが、私を、どこか幸せな気持ちにさせた。まるで、恋の告白を聴くように胸がはずむ。この人は、私の何かを気に入ってくれたの?

 人はなんて欲張りなんだろう。二人だけで会話してみたいという願いは、あっという間この人の物になってみたいと変化していく。SMチャットで出会った相手で、しかもSさん。お互いにフリーなのだから、ちょっと、「振り」だけでもしてみたい。リアルじゃない気安さから、ついつい、そう思ってしまう。
 私は、引き寄せられるようにマイクを繋いでしまっていた。蓮さんの承認が降りるのをじっと待つ。まだかしら?遅い・・・。もしかして、軽い女と思われちゃったの?嫌われた?それとも操作が分からないのかしら。

 私を。受け入れて。・・・お願い。拒絶しないで。

 ようやく承認が降りた時に、私は、緊張のあまりに固くなっていた身体の力がどっと抜けて行くのが分かった。

「蓮さん、こんばんは。私を・・・・。あなただけの下僕にしてくれますか?」

 自分の口から出た唐突な言葉は、私自身を驚かせた。
しかも、蓮さんからの返事がない。その待っている時間に、言ってしまった事の後悔が沸き上がる。でも、その反面、今までのチャットでの経験が、絶対に相手は断ってこないという、自信に繋がっていた。Mが飼ってくれと言って、それを断る人はいない。何と言っても、バーチャルなのだから。他の人がみているチャットの中でも、簡単に、調 教もどきの会話になる事はよくあった。その場だけのお遊び。そんな事、たいした事じゃないでしょ?
 ううん、違う。だって、一度も自分から下僕にしてくれなんて、言った事無かった。それを、どうしてそんな事を。よりによって蓮さんに、そんな事を言ってしまったのか。あの、静謐な男性に、自分から足を開くような蓮っ葉な真似を・・・。
 後悔と、期待の間を、行ったり来たりしている事に、私は、苦笑した。これでは、まるで、初恋の相手に告白した中学生のようじゃないか。
 リアルでの経験が、私を勇気づける。実際に縛られているのとは全然違う。気に入らなければ、いつでも、離脱できる。スイッチを切って、その場を離れればそれで終わり。そんな、浅はかな物想いは、現れた文字に唐突に打ち切られた。

「私だけの下僕とはどういうことですか?」

「それは、ゆみかさんの心の奥底から出てきた言葉なのでしょうか?」

 私の甘い認識は蓮さんの返事を受けて、ひっくり返った。初めてすり寄った相手にひっぱたかれたような気分だった。SMチャットで知り合う男性の多くが、会った事もなく、何度か時間を共有しただけの相手にネット調 教の誘いをかけるのは、それが、ただの言葉遊びだと思っているから。だから、こんな時は、大げさに喜んでくれたり、言葉で辱めたりしてくるのが常なのに。
 喜んでもらえなかったショックと、その反対に、ああ、やっぱり・・・この人は他の人とは違うんだと言う不思議な嬉しさが交錯した。

「下僕になるということは、主人が死ねと命ずれば死もいとわないということではありませんか?」
「そんな事、現実じゃありえないでしょ?・・・・下僕と主人って言ったって、私の面倒を全部みてくれる訳じゃないんだし・・・・・。」
「では、あなただけの下僕などと気安く言わないことです」

 蓮さんの、文字が、ぽつぽつと雨だれのように私の胸の中に落ちてくる。私は、この人ともっと話したいと考えてしまう。蓮さんの言う事は正しい。なのに、なぜか『自分』の存在が拒絶されたような、辛い気持になってしまう。

 優しかった人が急に遠ざかった。

 そして、ぬくもりも・・・。

 でも、そんなの変じゃない?だって、私は、虐げられる事を望んでいたんじゃなかったのかしら?
「自分から飼ってくれなんて淫乱だな。」とか「ひざまずいてご主人様にお願いしろ。」とか、言ってもらう相手を探すために、チャットへ行くんじゃなかったのかしら?それがMって事で、酷い事を言われる事で、一段下に扱われる事で・・・私は満足するべきなんじゃなかったの?

「私は本当に全部を投げ捨ててでも私の元にくる者があれば、面倒を全部見ますよ。それが私の考える調 教でありBDSMですから」

 だから、冷たくされたら、嬉しいと思わないといけないのじゃないんだろうか?

「蓮さんは、そんなふうに、女性の面倒をみた事があるんですか?」

 蓮さんの手が、足もとに膝まずく誰かの頭の上に乗せられるシーンが、頭の中をよぎっていく。私ではない誰かの頭の上の手。おかしい。一度も見た事のないはずなのに、こんなにはっきりとその手が見えるような気がするなんて。捻じれるような羨ましさと、妬ましさと、寂しさが一緒に襲ってくる。
「いいえ 今までいい人にめぐり合っていないですね。でも、そういう人が本当に居るのなら、主人として当然、すべての面倒を見ますよ。Disciplineというのは日本ではあまりないですが、もし、出来るのであれば それこそが、私の理想ですよ」

 言葉が、心を捉え、言葉が、少しずつ、私を変えていく。透明になった私の世界の殻は脆く薄く引き延ばされて行く。その透き通った色に。その向こうに透けて見える世界の美しさに、私は、身をあずけてしまいたがっていた。


続く・・・


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    2008

10.06

ね・ネット調 教

ネットでさえ 主の文字だけ 胸に染み入る 





 「ネット調 教」について、私は懐疑的でした。SとMの間を行ったり来たりしている私は、M側の都合を考えたり、S側の勝手な希望を考えたり、ネットだけで相手を支配する事の可能性や不完全さを考えたりして「やっぱり無理っ!」とか、思ったりしていました。
 何しろ、好みが「痛い」の好き・・・なので、手の込んだ「言葉責め」とか、「快楽系」とか、「露出系」とか、よく分からんちんなのであります。
 で、痛いのが好きなMが暴走したら、ネットでは止めようがありません。それでは、支配した事にならないじゃないか・・・とか、まあ、しょうもない事を考えてウロウロウロウロ・・・・。
 それで、ずーーーーーーーーっと、このお題の所で止まっていました。「歌留多が完成するのは一体いつのことだろう。」とか、思いながら・・・「ね」のつく、他の言葉を探してみたりして・・・。

 ところが、ひょんなところから、ある人に相談してみたところ「プロット」を、いただいたのです。ネット調 教の物語の。(笑)だから、ひょいひょいひょいと、短編を書いて、で、やっつけ仕事で次の「ゐ」へ、行こうと思ったんですが・・・。orz

 思ったよりも長い話しになりそうだ。orz

 これ書いてたら、いつまでたっても、普段の更新もままならないっ!?・・・・と、言う、手前勝手な都合で((゜-゜;)ヾ(-_-;) オイオイ...)ここは、予告編だけに・・・。
 せっせと書いて、ぼちぼちと、アップすしていく事にしましたので、またまた、のんびりとお付き合いくださいませ。m( __ __ )m


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 自分がMだとどうして思いこんでしまったのだろう・・・。そんな事を不思議に思ったのは、5番目の男性と別れた時だった。

 最初に付き合ったひとが「ちょっと縛ってみない?」と言って、手首を握ってきた時、なんだかどきどきした。その時のセックスが結構よかった。バイブを使われた時に、とっても悪い事をしているような気がしたそのせいで一層感じてると思った。後ろめたくて、刺激的で、すごく違う世界に入り込んだように。

 二番目に付き合ったひとと、相性がよくなかったのも原因の一つだ。大好きだったのに、何をしてもうまくいかず、ちっとも感じなかった。よかったのは、抱き寄せられるその手前まで。ピストンされて揺さぶられて、ぽっかりと醒めている私の上で、大仰に自分だけ感じて逝ってしまう人。

1+1=2

 だから、私はMなんだって思った。一人になった淋しさも手伝って、ネットでSMの相手を探した。深い海の中に潜って行く時間を経て、私は3番目の男を「主」に持った。朝と、昼と、帰宅の電車の中と、お風呂の脱衣場からメールをしてくれる人。

 既婚者だった。

 普通に知り合った恋人には無かった優しさに魅かれた。大人の余裕にも憧れた。何より私だけの主。大っぴらに手をつないでは歩けないけれど、いつも私の事を思ってくれる人。
私の時間はその人でいっぱいになった。そして、何度か逢瀬を重ねた。ひざまずいて懇願し、縛られたり、焦らされたり、あれこれ恥ずかしい事を、言ったり、言われたり。

 4番目、5番目と相手を変えた後に気がついた。私だけの主人だと思い込んだ、あれほど好きだった相手が、すでに、面影もおぼろになっている事に。私は、ほんとはMじゃなかったのかもしれない。

 カチャカチャとキーを叩きながら、私はそのSMチャットの中で、退屈な時間をやりすごそうとしていた。ポンっと、画面の色が変わり、待っていた人が来る。ここの所、同じ時間帯に、一緒の時間を過ごした人。一つ一つの言葉が浮かび上がり、ゆっくりと流れるテンポを好きになった。相手の言葉を待っている時間のせいで、不思議に心が惹きつけられて行く。
 6番目の相手に・・・って、積極的に思ってた訳じゃない。仕事が忙しくて、リアルの出会いを探す時間も無く、外にいれば慌ただしく、家に帰れば疲れのせいなのか、何もかもはっきりとしないぼんやりとした毎日に、ちょっと彩りを添えたかっただけだった。

「蓮さんって、調 教にどんなイメージを抱いているの?」
「そうねぇ・・」
 私は画面を見つめる。
「ゆみかさん、あなたはどう思ってるの?」
「相手を自分の型にはめて行く事かしら。手順を踏んで、SMを受け入れさせていくように」
 もしかしたら、彼は、まだ、あまり経験がないのかもしれない。
何人かの人間が絡んでくるために、雑談の中らから、相手の本音を知るはなかなか難しい。でも、ほんとの所、内容はどうでもよかった。彼が紡ぎだす、言葉が刻む不思議なリズムに、私は酔っていたのだ。ピアノのペダルを使って、音を長く響かせているような・・・そんな感じ。
 そして、その空間に流れる響きを遮るような、他の人の言葉に、私は少しイライラしていた。

「ねぇ、蓮さん。もし、よろしかったら、私とメッセンジャーをしていただけませんか?」
 話題の切れ目の唐突な申し出に、チャットにいた全員が黙ってしまったのが分かった。女性から、それも、Mである私の方から誘った事に、不快さを感じた人もいたのかもしれない。あ、しまった。と、思った時は、リターンキーを押してしまっていて、もう、取り消しようが無い言葉は、パソコンのディスプレイに現れていた。
「私は、あまり、パソコンが得意じゃないんですよ」
 蓮さんの文字が、画面に現れる。ただの文字なのに、彼が苦笑しているような気がした。
「メッセンジャーとは、どんなものなんですか?」
 その言葉を、好意的な返事と解釈したのは、思い込みだったのだろうか?私は、まるで、手を上げた事で先生にあてられて、皆の前で初めて発表する子供のように舞いあがり、震える手で、次の文字を打ち込んでいた。
「じゃあ、別の部屋へ行きませんか。説明しますから」
 待っているだけでなく、大胆に主導権を取る自分にちょっとびっくりしながらも、私は少し、うきうきしていた。すでに、リアルの経験のある私は、不思議そうにSMについて、私に質問しながらも、ゆったりと何でも受け入れてくれそうな相手に、自分が立派な下僕である事をひけらかしてみたかったのかもしれない。



続く・・・
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